国内の EC 事業者で利用が広がる TikTok 広告。しかし、動画クリエイティブを準備するハードルが高いと感じ、活用に踏み切れない方も多いのではないでしょうか?でも実は、静止画と商品カタログ(データフィード)を利用すれば、動画がなくても TikTok 広告を出稿できます。
「TikTok 広告はどう活用する?EC サイト向け入門セミナー」では、TikTok for Business Japan の鈴木様とアナグラムの平野様から、TikTok 広告の基本や動画クリエイティブがない場合の活用方法について解説していただきました。
※アーカイブ動画は、アナグラムパート、フィードフォースパートのみとなります。
TikTok はモバイルの視聴時間が 1 位!アクティブな優良ユーザーが、広告による売上に大きなインパクトをもたらす(第一部:TikTok for Business Japan)
TikTok for Business Japan の鈴木様から TikTok のユーザー動向や広告の基本について解説していただきました。
鈴木 雄翔 氏
TikTok for Business Japan
SMB Agency Lead
アナグラムを含む 3 社の広告代理店にて、運用型広告を軸としてデジタルマーケティングに従事。2020 年 4 月より TikTok for Business にジョイン。同社にて大手広告代理店を担当後、大手広告主の予約型 / 運用型広告を一気通貫で支援するアカウントマネージャー組織を新設しリード。現在はセールスとして日本と韓国の SMB 広告代理店を支援。
TikTok はモバイルの視聴時間が 1 位
TikTok のモバイルにおける 1 日あたりの視聴時間が 100 分を超え、他のプラットフォームを抑えて 1 位となっています。(2023 年 7 月時点)。
リッチな視聴環境と豊富なコンテンツで、行動変容も期待できるTikTok 広告
TikTok と他プラットフォームを比較したマクロミルの調査で以下の結果が出ています。
- TikTok 動画広告への好感度:1.29 倍
- 関連情報をほかの SNS や動画サービスで検索したことがある:1.47 倍
- その投稿に「いいね」やコメントをしたことがある:1.25 倍
- 紹介された商品・サービスを欲しくなったことがある:1.22 倍
このことから TikTok 広告は行動変容まで期待できると言えます。
TikTok 広告の高い効果は、リッチな視聴環境によってもたらされています。短尺動画なので隙間時間に見られるほか、縦型動画かつ音声 ON で視聴されるため没入感があります。
投稿されるコンテンツも、以前はダンスなどが多かったですが、現在は多様化しています。それに伴い、広告を配信する企業やユーザーが視聴する目的も多様化しています。
TikTok ユーザーは情報感度が高く、情報発信も活発という傾向があります。そのため、広告の直接効果だけでなく、波及効果も期待できます。
2021 年に実施されたマクロミル社の調査によると、他プラットフォームと比較して以下の特徴があります。
- 最新の情報をいち早く入手したい:1.72 倍
- 知らない分野や世界にも触れたい:1.3 倍
- 注目した話題はすぐに人に伝えたい:1.92 倍
- 新製品や良い品物があると知人に勧めることが多い:1.28 倍
アクティブで優良な TikTok ユーザーは、広告による売上にも大きなインパクトをもたらします。また、ニールセン社の調査によると、消費財カテゴリにおいて他プラットフォームと比較して ROAS が 1.6 倍高いという結果が出ています。
TikTok for Business とは?
TikTok for Business では、 TikTok だけでなく Pangle への広告配信も可能であり、両プレースメントへの広告配信を統合して管理・運用ができます。Pangle は TikTok for Business が提供するアドネットワークであり、多様なアプリ・Webサイト に広告を配信することができます。
DAU は 7,000 万人以上!Pangle の 4 つの特徴
Pangle は TikTok をのぞく国内の多様なジャンルのアプリ・Webサイト に広告が配信できるアドネットワークです。以前はアプリインストール目的での活用が多かったですが、今ではWebサイトでのコンバージョン目的での 広告配信でも多く活用されています。
Pangle には以下の 4 つの特徴があります。
- 規模
- DAU(Daily Active User) は 7,000 万以上
- オールジャンルの広告在庫、数多くの見込み顧客にリーチ
- マッチング精度
- 見込みの高いユーザーとマッチングさせるための高い予測精度や入札機能
- トラフィック品質
- 良質なアプリ、パブリッシャーと密に連携し、良質なトラフィックを確保
- 直近のアップデートで、広告配信がされたメディアのレポートを出力できるようになり、メディアごとに配信のブロックも可能に
- 独自フォーマット
- 動画リワードやプレイアブル広告などの独自フォーマットが利用可能
- 静止画広告の配信も可能
Pangle はパフォーマンス広告のみで、ブランド広告には対応していません(TikTok はブランド広告にも対応)。EC ではパフォーマンス広告がメインとなるため、TikTok と Pangle の両方を試していただくのがオススメです。
動画クリエイティブがなくても商品カタログを連携すれば、TikTok 広告の配信が可能
EC で使用されるキャンペーン目的は「Web サイトのコンバージョン数」「商品販売」の 2 つがメインです。CPA と ROAS のどちらでも最適化することが可能です
商品販売キャンペーンは、商品カタログを利用することでいわゆるダイナミック広告の配信ができます。カルーセルのフォーマット(※)を用いることで、動画クリエイティブがなくても、静止画だけでダイナミック広告の配信が可能です。
※カルーセル:複数の静止画を用いて出稿できる広告フォーマット。ユーザーは左右に画像をスワイプし、自分のペースで広告を閲覧することができる。
動画クリエイティブは TikTok らしいものを準備できると効果が高くなります。TikTok 動画エディターは TikTok らしい動画作成をサポートする機能で、広告管理画面から利用できます。
主な機能は以下のとおりです。
- 動画にオーバーレイでテキストを挿入
- 人工音声のナレーションを追加
- 横型の動画クリエイティブを最適な縦型動画に変換
- ロイヤリティフリーの音楽やエフェクト素材
直感的に使うことができるので、このような編集ツールに慣れていない人でも扱えます。
TikTok ライクな動画がなくても OK?成果をあげるターゲティングとクリエイティブのコツとは(第二部:アナグラム株式会社)
アナグラム株式会社の平野様から、これさえわかれば TikTok 広告を始められる、ターゲティングとクリエイティブ作成のコツについて解説していただきました。
平野 森 氏 アナグラム株式会社 銀行の法人営業・TikTok 広告の代理店を経てアナグラムに入社。自身で運用するTikTok・YouTube の総フォロワー数は 30 万人超。現在は運用型広告のコンサルタントとして EC や人材などの業種でクリエイティブ企画・広告運用を行っている。
今、TikTok 広告がアツい
- TikTok はモバイルの視聴時間 1 位
- アドネットワーク Pangle はアプリ、Web の配信面が増え、クリエイティブのフォーマットもほとんど縛られない
という理由で、代理店の目線でも TikTok 広告がアツいです。
クライアントも TikTok にユーザーが移っていると感じており、広告を出したい方やオーガニックのアカウントを開設して接点を持たれる方が増えています。
今、TikTok をやらない理由はありません。
TikTok 広告でありがちな 2 つの誤解
TikTok 広告について、2 つの誤解がありがちですが、いずれも心配ご無用です。
- ターゲティング精度が微妙なのでは?
他の媒体に比べて個人情報が少なく、シグナルも拾えないのでは?という声が聞かれますが、ブロード・デモグラ配信で成果が期待できます。 - TikTok ライクな動画を準備しないといけない?
お手持ちのアセットで配信ができ、成果も見込めます。
●ターゲティング精度
配信アルゴリズム、視聴傾向の学習によるターゲティングが優秀なため、ブロード・デモグラ配信で成果が期待できます。これは TikTok がユーザーの視聴データを蓄積し、ユーザーに適切なコンテンツを届けられるからです。
TikTok では以下のデータを取得して学習しています。
- 動画の情報:キャプション、サウンド、ハッシュタグなど
- ユーザーの反応:視聴維持率、いいね、コメント、シェアなど
※参考:TikTok が「おすすめ」に動画をレコメンドする仕組み|TikTok ニュースルーム
1 日の視聴時間が 100 分もあるのは、学習によるレコメンドが優秀である証拠です。これを活かすにはデータをためることが必要で、ターゲティングを狭めすぎると効果が落ちる傾向があります。
広告も「何をどこまでみたのか?」「LP に遷移したのか?」「購入したのか?」のデータを配信に活かすアルゴリズムなので、データを蓄積できるようにブロード・デモグラでの配信を推奨しています。
●クリエイティブ
TikTok 広告用のクリエイティブ制作はハードルが高いと思われがちですが、手持ちのアセットですぐに配信できます。カルーセルであれば、静止画で配信が可能です。
カルーセルは、静止画が横並びで表示できるフォーマットで、オーガニック投稿でも見受けられます。制作のハードルが低いだけでなく、エンゲージメント率が動画より高くなることもあります。これは動画が自動的に再生される”受け身”に対し、カルーセルは”自発的”にスワイプし閲覧するという違いによる効果です。
カルーセル広告を配信する方法は 2 つあります。
- カタログから自動で生成(オススメ)
- カタログをもとに媒体が自動でカルーセル広告を生成してくれるため、制作コストを削減
- ユーザーシグナルにもとづきダイナミックに製品を出し分けてくれるため、成果も期待できる
- 別媒体でアップロードした画像をそのまま入稿
- X(旧:Twitter)や Instagram などに投稿した複数の画像をカルーセル広告として入稿
Instagram のリールや YouTube ショートで縦型動画の投稿実績があれば、そのまま TikTok 広告で配信をして成果が出ているクライアントもいます。
TikTok 広告の配信事例
●事例①:アパレル系 EC
- カタログ × カルーセル広告|ROAS 300% 前後
TikTok 広告をカルーセルから始めて成果が出た事例。セール期間は成果が振るわなかったが配信を続けたことで、サイトへのセッション数を増やす役割を果たした。結果、TikTok の滞在時間が伸び、そこでしかで出会えないユーザーにアプローチができた。 - オーガニックで投稿した動画を TikTok 広告で配信|ROAS 200% 前後
季節の新作リリースに合わせて作成したオーガニック投稿の動画を、広告でも配信しブースト。
●事例②:食品系サブスクリプションサービス
- ギフティング × SparkAds(第三者配信)で獲得拡大
SparkAds は TikTok のタイムラインに流れるオーガニック投稿を広告に活用できる広告メニューです。インフルエンサーが投稿した商品に関する動画を SparkAds で広告配信し成果をあげました。
それだけではなく、従来と異なる切り口でも成果がでることがわかりました。今までは訴求軸 A で広告を配信していましたが、インフルエンサーが訴求軸 B でアピールして一定の成果があったため、自社でも訴求軸 B のクリエイティブを作って配信を拡大しようとしています。
以上のように、TikTok 広告では必ずしも動画が必要ではありません。お手持ちのアセットで広告を配信して成果を出すことができるので、ぜひチャレンジしてみてください。
これだけは押さえたい!動画をつくるポイント
「使えそうなカタログもないし、オーガニック投稿もしてない」
「カタログは用意しているけど、カタログだけじゃ成果が出なかった」
「カタログだけじゃなく、もっと配信を広げていきたい」
という方のために、広告動画を制作するコツをご紹介します。
抑えたいポイントは台本、撮影、編集の 3 点です。
●企画台本
冒頭で充分にユーザーを惹きつけるためには、台本が重要です。
いくつか方法はありますが、商品が解決する悩みや商品がもたらすベネフィットで台本を始めるのがオススメ。
たとえば、化粧水なら「洗顔後の肌のツッパリをこれが全部解決してくれた」と言いながら手のひらに化粧水を出したり、肌に塗ったりします。アウターであれば「このアウター、イケてるのに、軽くてポケットが充実していて利便性もやばい」というイメージです。
商品にまつわる便益や、解決してくれる悩みをフックに動画を始めると、有益な情報なので動画を見入ってくれます。すると、動画への興味から、商品への感情導線を設計しやすくなります。
まずは商品が解決する悩み、商品がもたらすベネフィットでユーザーを惹きつけましょう。そのうえで動画には以下の 4 つの要素を入れます。
- 商品の便益
- 便益の理由
- 便益による明るい未来
- オファー
便益とは商品がもたらすメリットです。「何でそのメリットがもたらされるのか」「それによってどんな明るい未来があるのか」を、感情の飛躍がないよう順番に気を付けるといい台本になります。
●撮影
スマホでの撮影を推奨しています。
TikTok は縦型の動画なので、スマホで撮影すれば見えている画面がそのままタイムラインに流れることになります。見えている画面をそのまま動画素材にしてよいかを意識するだけで、撮影の質が上がっていきます。
●編集
最低限、テロップと BGM は入れましょう。
編集は難しいイメージがあるかもしれませんが、PC やスマホで簡単に編集できる無料のツール・アプリがあるので、チャレンジしてもらいたいです。個人的には VLLO(※)が初心者でも使いやすくオススメです。
※参考:SNS投稿や動画広告に活かせる!スマホアプリで動画編集する方法を徹底解説|アナグラムのブログ
編集で注意したいのは、素材が商用利用が可能かどうかです。オーガニック投稿で使われていた素材でも、商用利用が NG なケースがあります。利用規約をチェックして編集をしましょう。
企画台本を整えて、撮影で商品を伝えられる映像を用意し、素材を切り貼りすれば動画は完成です。
台本の書き方
用意した表に、意図、台本、表現したい要素、受け手の感情を書き出します。下図はアパレル系で、春の新作(メンズ)の購入を促す動画の台本例です。
台本の詳しい書き方はアーカイブ動画の 19:30 頃から解説しています。
https://youtu.be/FDk0tVFisYU?feature=shared&t=1170
商品カタログがある人も無い人も、ご紹介した情報を参考に、ぜひ動画作成にチャレンジしてみてください。
EC 事業者なら取り組んでおきたいカタログについて解説(第三部:株式会社フィードフォース)
株式会社フィードフォースの横関より、TikTok 広告のカルーセルで利用できる商品カタログについて解説しました。
横関 哲 株式会社フィードフォース dfplus.io セールス / カスタマーサクセス リーダー。お客様それぞれに最適なデータフィード施策や、中長期を見据えたデータフィード管理環境の導入を提案している。
商品カタログ活用についておさらい
TikTok で商品カタログを利用した「動画ショッピング広告(Video Shopping Ads)」を配信する手順は以下のとおりです。
- 商品カタログの入稿
- 商品カタログ内の商品の動画クリエイティブを作成
- タグの実装
- 測定設定・キャンペーンの設定
商品カタログとは、EC サイトの保有する商品データを広告媒体の規格に沿って変換したデータ、またはその仕組みのことです。データフィード、商品フィードと呼ばれることもあります。
商品カタログの作成は 1 度きりではなく、在庫数などを更新するために、1 日 1 回など定期的な更新が必要です。
広告クリエイティブに表示される価格などの情報は、商品カタログをもとに自動で生成されます。各媒体が必須項目を設けており、入れる値によって広告クリエイティブが変わるため、商品カタログをどう作るかが重要です。
商品カタログ活用のはじめ方
TikTok 広告で商品カタログを準備する手順を解説します。
TikTok 広告マネージャーの左側のメニューから「アセット」>「カタログ」を選び、「カタログを追加」をクリックします。
各項目を入力して「作成する」をクリックします。
TikTok カタログマネージャーに移動するので「商品の追加」をクリックします。
アップロード方法を選択して「次へ」をクリックします。
カタログの追加方法は 5 つあり、それぞれのメリット・デメリットは下記の表のとおりです。すでに Google Merchant Center に商品フィードがある場合は、それを TikTok に連携するのが、手間がかからずオススメです。
カタログに商品を追加する方法
入稿方法 | メリット | デメリット | |
手動で追加 | 管理画面から 1 商品ずつ情報を入力する | ・開発などのリソースが不要 | ・商品点数が多いと手間がかかる ・手作業のため、ミスが起こりやすい |
スケジュールによって データフィードを 自動アップロード | 自社システムやツールでデータフィードを作成し、アップロードする | ・商品情報をリアルタイムで連携可能 ・細かなデータフィードの改善が可能 | ・開発などのリソースが必要なケースが多い |
テンプレートを アップロード | CSV か XML 形式のテンプレートファイルに情報を入力し、管理画面からアップロードする | ・開発などのリソースが不要 ・商品数が多くても、一括でアップロード可能 | ・リアルタイムの更新には手間がかかる ・データフィードの改善に手間がかかる |
Google から インポート | Google Merchant Center のデータフィードを連携する | ・開発などのリソースが不要 (すでに Google Merchant Center を利用している場合) | ・Google Merchant Center に不具合があると連携されなくなる ・細かなデータフィードの改善ができない |
ピクセル アップロード | サイトにピクセルを設定し、商品情報を自動で連携する | ・商品情報をリアルタイムで連携可能 | ・サイトにピクセルの設定が必要 ・細かなデータフィードの改善ができない |
Google Merchant Center からのインポートが難しい場合や、以下のようなケースではデータフィード管理ツールの利用がオススメです。
- カタログ連携する商品の ON/OFF 管理
Google ショッピング広告には出したいけど、TokTok 広告に出したくない商品がある場合などです。
- 計測用のパラメータ管理
各媒体の広告管理画面でパラメータを付与するのは煩雑です。
- 複数媒体のデータフィード管理
データフィードを連携する媒体が増えても、1 つの場所で管理できます。
まとめ
TikTok 広告は動画クリエイティブがなければ配信できないと思われがちですが、カルーセル広告であれば静止画だけでも配信が可能です。商品カタログを活用することで、ダイナミック広告を配信することもできます。
モバイルの視聴時間が 1 位でユーザーも増えている TikTok は、視聴データをもとにした学習・レコメンドも優秀です。この機会にぜひ配信を検討してみませんか?
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